TOPへ

血尿

血尿血尿は、尿中に赤血球が混ざっている状態です。尿は腎臓で作られ、尿管、膀胱、尿道と経由して体外へ排泄されます。また男性の場合は、前立腺が膀胱の下に位置し尿道の周りを取り囲んでいます。血尿を認める際は、これら尿路のどこかで出血を起こしていることが考えられます。見た目でわかるような血尿を肉眼的血尿、見た目ではわからないものの、顕微鏡で見て赤血球が確認出来るものを顕微鏡学的血尿といいます。中には大きな病気が原因となることもあるので、血尿を認めた際は泌尿器科までご相談ください。

血尿の原因

血尿の原因血尿が出る原因には、尿路結石、尿路感染症、尿路にできるがん、腎炎などがあります。
また、詳しい検査をしても血尿に至る原因が不明なものもあり、これを特発性腎出血といいます。

膀胱炎

膀胱炎は、尿道口から侵入した細菌が、膀胱の粘膜に繁殖し炎症を起こす病気です。主な症状は、排尿時痛、頻尿、残尿感などですが、血尿を伴うこともあります。血尿を伴う膀胱炎を出血性膀胱炎と呼び、炎症を起こした膀胱の粘膜から出血を起こしています。

尿路結石
(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)

尿の中に含まれる物質が腎臓の中で結晶を作り、それが蛋白質などと結合したものが「尿路結石」です。
できた結石が尿の流れに沿って、腎臓から尿管、膀胱、尿道へ移動することがあり、結石のある場所によって「腎結石」、「尿管結石」、「膀胱結石」、「尿道結石」と呼ばれます。結石が尿路の粘膜とこすれて出血し、血尿が出ることがあります。
尿管結石では背中や腰に激しい痛みが起こり、「痛みの王様」と言われています。

膀胱がん

50歳以上に多く発生するがんです。
膀胱は、腎臓で作られた尿が尿管を通って流れてきて、尿を貯留する袋状の臓器です。膀胱の内腔は、尿路上皮という粘膜で覆われており、膀胱がんの90%以上はこの尿路上皮にできる尿路上皮がんです。
初期は無症状で、痛みを伴わない血尿(無症候性肉眼的血尿)を契機に発見されることが多いです。
頻尿、排尿時痛、残尿感といった膀胱炎症状が見られることもあり、抗菌薬を内服しても中々改善しない膀胱炎症状を認める時には注意が必要です。初期の段階で発見できれば、内視鏡で腫瘍を切除することで治療が可能です。痛みの伴わない血尿を認めた際は早期に泌尿器科を受診してください。

腎盂がん・尿管がん

腎臓の実質で作られた尿が流れてくる腎盂と、その尿を膀胱に運ぶ尿管に発生するがんです。年代的には50-70歳代の方で男性に多く見られます。膀胱がんと同様の性質を持っており、初発症状は膀胱がんと同様に、突然の痛みを伴わない血尿が多いです。

前立腺がん

前立腺がんは、初期は無症状であることが多いですが、進行すると血尿が見られることがあります。
血尿ではありませんが、射精時に精液に血が混じる血精液症というものがあります。
多くの場合は心配がありませんが、前立腺がんで血精液症を呈することがあります。
50歳以上の方でこのような症状が出た際は注意が必要です。

腎細胞がん

腎細胞がんは腎臓の実質に発生するがんです。年代的には50歳以上の方で男性に多く見られます。
初期にはほとんどの場合で症状を認めません。画像検査が普及していなかった時代には、腫瘍の増大により、痛み、腹部腫瘤、肉眼的血尿などの症状で見つかることが多かったです。現在は健診などでの超音波検査やCT検査で、偶発的に発見されることが多くなってきています。近年は、早期であれば腫瘍の大きさや場所によってはロボット手術による部分切除も行われています。

糸球体腎炎

腎臓に流れてきた血液を濾過し、不要な老廃物を排出する糸球体に炎症が起こる病気です。
血尿とともに、蛋白尿を認めます。原因は様々ですが、治療をしないと腎機能障害が進行し、腎不全に至るものもありますので注意が必要です。
尿検査で、血尿と尿蛋白陽性を指摘された際は、腎臓内科への受診が必要となります。

特発性腎出血

血尿は認めるものの、精査の結果で上記のような血尿の原因が判然としない場合を特発性腎出血といいます。

ストレスが原因になることもある?

ストレスによって肉眼的血尿が発生するという医学的な根拠はありません。
一方で、ストレスが消化管の出血の原因になることには医学的な根拠が確認されています。例えばストレス性の胃潰瘍などはその例です。
しかし血尿が出た際は、何らかの原因があることが多いですので、例え一時的なものであっても一度泌尿器科までご相談いただくのをおすすめします。

血尿の色でどこが悪いかわかる?

血尿の色 原因と考えられる部位 解説
赤茶色・褐色
黒っぽい(コーラみたいな色)
腎臓 血液が尿に混入した後、ある程度時間が経過した状態です。
赤茶色や黒っぽい色は、尿がつくられた時に血液が混入したものと考えられますので、腎臓の病気の可能性が疑われます。
ピンク色・鮮やかな赤色 尿道
膀胱
腎臓
血液が尿に混入した後、排尿までの間にあまり時間が経過していない血尿であると考えられます。特に鮮やかなピンクや赤の血尿は尿の出口に近い、尿道や膀胱からの出血が疑われます。
濃い赤色 膀胱
尿道
尿路上皮がんで見られます。
その他、膀胱結石や尿道結石なども疑われます。
オレンジ色・茶褐色 肝臓
※脱水状態
寝起きや大量の汗をかいて脱水状態のときに尿が濃縮されることによって、尿がこのような色になるときがあります。
肝臓に問題が生じて尿がこのような色になるときもあります。

血尿が出たときの検査方法

尿検査

尿中の赤血球や白血球の有無などを調べます。赤血球を認める場合は、尿路感染症、尿路結石、尿路にできるがんの可能性が考えられます。白血球を認める場合は、尿路感染症や尿路結石の可能性が考えられます。

尿培養検査

尿中に白血球を認める際に行ないます。尿中に繁殖する細菌の種類を確認します。

尿細胞診検査

尿検査と同じように、提出していただいた尿を顕微鏡で確認して、がん細胞が混ざってないかを確認します。結果が陽性であれば、膀胱がんを含めた尿路上皮がんの可能性は高くなりますが、結果が陰性であってもがんがないとは言い切れません。

超音波検査

腎臓や膀胱に腫瘍や結石がないか、前立腺の大きさ、膀胱内の炎症所見などが確認できます。

採血

腎機能の低下の有無、尿路感染症が疑われる際は炎症反応の程度、前立腺がんが疑われる際は腫瘍マーカーであるPSAの測定などを行ないます。

レントゲン検査

尿路結石が疑われる際に、結石の有無を確認するために行ないます。

CT検査

レントゲン検査で判然としない結石の確認、水腎症など尿路の閉塞を疑う所見がないか、また閉塞の原因などが確認できます。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査は、膀胱がんの有無や膀胱内の結石の有無を確認するために行われる検査です。また、血尿の原因がはっきりしない場合にも行われることがあります。
検査にあたって、尿道にゼリー状の局所麻酔薬を注入したうえで、内視鏡を尿道に挿入します。当院では『軟性鏡』という、特に挿入部分が柔らかく曲がる材質で出来ている内視鏡を使用しますので、痛みを伴う事はほとんどありません。

血尿が出た時の受診の目安

受診をした方が良い症状

血尿で病院を受診する目安
  • 何度もトイレに行きたくなる(頻尿)
  • 残尿感
  • 尿に濁りがある
  • 排尿の時に痛みがある
  • 腰やわき腹が痛い
  • 健康診断などで尿に蛋白が出ていると指摘された

血尿に加えて上記のような症状がある場合。

肉眼でわかる血尿が出たら

肉眼でわかる血尿(肉眼的血尿)が出たことに気がついたら、なんらかの病気が原因であることがあります。
病気の原因によっては早期に治療する必要があるものもあります。

検査で尿潜血陽性が出たら

人間ドックなどで、尿潜血陽性を指摘されることがあるかと思います。
これは、尿をテステープという試験紙につけて、色調変化を確認する検査です。血尿の有無を簡易的に確認できる便利な検査ですが、尿潜血が陽性であっても、必ずしも血尿がある訳ではありません。実際に顕微鏡で尿中の赤血球の有無の確認を行ない、顕微鏡学的血尿がある場合は詳しい原因精査を行なっていきます。

血尿はほっといたらどうなる?

血尿を放置していると、血液が凝固して塊となり、膀胱の出口が閉塞して尿が出せなくなる「膀胱タンポナーデ」を呈することがあります。
「膀胱タンポナーデ」を起こすと、カテーテルなどで早期にこの凝血塊を回収し、尿路の閉塞を解除する必要があります。