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前立腺肥大症

前立腺肥大症の症状

排尿症状

  • 尿の勢いが弱くなった(尿勢低下)
  • 尿が出始めるのに時間がかかる
  • 尿が分かれる
  • おしっこしている途中で尿が途切れる(尿線途絶)
  • 力まないと尿が出ない(腹圧排尿)

排尿困難をはじめとした、尿を出すことに関連する症状です。

蓄尿症状

  • 朝起きてから就寝まで概ね8回以上排尿をする(昼間頻尿)
  • 夜間就寝後に排尿のために1回以上起きる状態(夜間頻尿)
  • 急に起こる、我慢できないような強い尿意(尿意切迫感)
  • 尿意切迫感によってトイレに行くまでに尿が漏れたり、漏れそうになる状態(切迫性尿失禁)

これらは過活動膀胱の症状ですが、前立腺肥大症の患者さんは50%以上で過活動膀胱を合併しています。

排尿後症状

  • 排尿後にすっきりしない、尿が残っている感じがする(残尿感)
  • 排尿後に下着をつけると、尿で濡れて下着が汚れる(排尿後尿滴下)

これらの前立腺肥大症の症状は、生活の質は低下するものの、必ずしも治療の必要がある訳ではありません。しかしながら症状が進行すると、残尿があることにより尿路感染症を起こしやすくなったり、尿が出なくなる尿閉、たまった尿が腎臓に逆流することで腎臓が腫れる水腎症を呈することがあります。水腎症の状態を放置すると、腎機能障害や腎不全に至るリスクもあります。

前立腺肥大症の痛みは?

前立腺肥大症の痛みは? 前立腺肥大症は前立腺炎と呼ばれる炎症を併発していることもあり、腰、会陰部、陰茎と精巣が痛くなることがあります。

年とともに現れる「前立腺肥大症」とは?

年とともに現れる「前立腺肥大症」とは前立腺肥大症は、その名の通り前立腺が肥大して様々な排尿症状を呈する疾患です。
50歳以上になると頻度が増加し、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%と年齢と共に発症頻度は高くなる傾向です。しかし、前立腺肥大がある方が、必ずしも治療を要するわけではありません。

前立腺肥大症の危険因子

前立腺肥大症の危険因子 前立腺肥大症の明らかな危険因子は加齢です。肥満、高血圧、高血糖及び脂質異常症と前立腺肥大症の関連も指摘されています。
また、野菜、穀物、大豆などに多く含まれるイソフラボノイドやリグナンは、前立腺肥大症の抑制因子と推測されています。
喫煙とアルコール摂取との明確な関連は指摘されていません。

前立腺肥大症を疑う時の検査

超音波検査

前立腺肥大症を疑う時の検査 超音波で前立腺の形や大きさ残尿量などを調べます。侵襲のない検査になります。

血液検査

血液検査血清PSAを測定し、前立腺がんのスクリーニング検査を行います。

直腸内指診

肛門から指を入れ、直腸越しに前立腺を触診します。前立腺の大きさや硬さなどを確認し、前立腺肥大症、前立腺がん、前立腺炎の鑑別を行ないます。

治療方法~前立腺肥大を小さくするには?

前立腺肥大症の治療法は、大きく分けて薬物療法、手術療法があります。
まずは薬物療法が行われるのが一般的ですが、薬物療法で効果が乏しい場合や、前立腺肥大による頻回の尿路感染症の発症、腎機能障害などの合併症が生じている場合は手術による治療が行われることがあります。

薬物療法

薬物による治療は主に

  • 前立腺の平滑筋を弛緩して尿道の圧迫を減らす(尿道を広げて尿の勢いを増す)方法
  • 尿道や前立腺の平滑筋を弛緩させ、前立腺への血流を良くすることで排尿症状を改善させる方法
  • ジヒドロテストステロンを抑えて前立腺容積を小さくして物理的な圧迫を減らす方法

があります。

  • 前立腺の平滑筋に存在する交感神経α1受容体を遮断することで、平滑筋が弛緩して尿道の圧迫が軽減します。α1遮断薬として、シロドシン、タムスロシン、ナフトピジルなどがあります。
    副作用としてたちくらみ(起立性低血圧症)、胃部不快感、射精時に精液が膀胱内に逆流する逆行性射精などがあります。
  • 一酸化窒素(NO)は尿道や前立腺の平滑筋の弛緩を促進し、これにより前立腺への血流を良くすることで排尿症状が改善されます。ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬はこのNOの作用を増強させ、PDE阻害薬としてタダラフィルがあります。副作用として動悸やほてりなどがある他、硝酸剤を投与中の方や心不全などの心疾患をお持ちの方は投与ができません。
    ED治療薬はこれと同じ作用機序を有するものとなります。
  • テストステロンは前立腺細胞に取り込まれて、5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。DHTが低下することで前立腺容積は縮小するため、5α還元酵素阻害剤であるデュタステリドが使用されます。
    1年間内服すると前立腺容積が25~30%小さくなると言われております。
    副作用として、ED、性欲低下などがあります。
    男性脱毛症であるAGAにもこのDHTが関与しており、AGA治療薬であるフィナステリドも、これと同じ作用機序を有します。

その他、漢方や生薬などが治療に使われることもあります。α1遮断薬よりも効果が劣ったり、有効性に十分な科学的根拠が示されていないものもありますが、副作用の心配が少ないです。

手術療法

ホルミウムレーザー前立腺核出術

尿道から内視鏡を挿入し、レーザー照射で肥大した前立腺の内腺をくり抜きます。
くり抜いた内腺は、膀胱の中で専用の回収機械で細かくして吸引して取り出します。

レーザー前立腺蒸散術

尿道から内視鏡を挿入し、高出力のレーザー照射によって肥大した内腺を蒸散させつつ切除します。

ロボット支援アクアブレーション療法

最新の手術療法で、画像ガイダンスとロボティクスを組み合わせた新規の低侵襲水アブレーション法です。画像により前立腺の蒸散範囲と決め、超音波のガイド下に高速生理食塩水の流れを使用して前立腺を切除します。日本でも順次導入が始まっています。

手術療法の必要がある、或いは希望のある患者さんは、当院が連携している手術可能な施設にご紹介申し上げます。

前立腺肥大症の予防はできる?

前立腺肥大症の予防はできる?

保存療法の中に生活指導が含まれるように、日常生活において心がけることで、前立腺肥大症の予防につながったり、排尿障害の様々な症状が軽減できることがあります。
具体的には以下のようなものがあります。できるものから取り入れてみてください。

  • バランスの取れた食生活、野菜、穀物、大豆などを積極的に摂取する
  • 肥満、高血圧、高血糖及び脂質異常症など生活習慣病の予防と改善
  • アルコールや刺激物の食べ過ぎは控える